なぜ「的を射る」と「的を得る」は混同されるのかを仕組みで解く

「的を射る」と「的を得る」は、意味が近く見えて混同されます。
- ①「射る」が日常で少ない
②「得る」が自然に響く
③文脈で通じてしまう
④公的文でも揺れが出る
仕組みを知ると、正誤より先に違和感の原因が見えてきます。
Contents
混同は「意味が近い錯覚」から始まる理由

音と意味が近く、使う場面の違いが意識されにくい。
「的を射る」と「的を得る」が
聞き手は細かな語の選び分けよりも、
「この人は核心を言っているか」
を先に受け取ります。
そのため、多少の言い回しのズレがあっても、
「会話として成立」
してしまいます。
ここが、誤用が生まれる入口です。
さらに「的」という語が入っている時点で、比喩の方向性が同じに見えます。
「的=ターゲット」
というイメージが強いので、「当たる・合う」系の言葉なら何でも自然に感じやすいのです。
その結果、
「射る(矢を放つ)」と「得る(手に入れる)」
の動作の違いが意識されにくくなります。
正誤以前に、脳内のイメージが似てしまう。
ここが混同の仕組みの核です。
・「要点を突く」という結果が先に伝わる
・聞き手は細部より結論の納得感を拾う
・「的」が同じで比喩の方向が同一に見える
・動作(射る/得る)の違いが薄れやすい
混同は、知識不足だけで起きるものではありません。
通じてしまう構造があるから、自然に混ざります。
*先に整理しておくと、正解は「的を射る」で、「的を得る」は誤用とされる表現です。
「射る」が遠く「得る」が近い語感の差
混同を強めるのは、言葉としての距離感です。
*「射る」は
弓や銃などを連想する、少し硬くて日常で出番が少ない動詞です。
一方
*「得る」は「理解を得る」「同意を得る」のように、普段からよく使う言い方です。
人は慣れた語を選びやすいので、同じ比喩に見えるなら、口から出やすい
「得る」
のほうへ引っ張られます。
また、「得る」は
“結果を手にする”
イメージがあり、「要点をつかむ」にもつながって見えます。
だから「的を得る」は、初めて聞いた人にも
「なんとなく意味が分かる」
感じが出やすい。
逆に「的を射る」は、比喩としての
「動作(射て命中する)」
を思い浮かべる必要があり、少しだけ頭の中で変換が要ります。
この差が、言い間違いを増やします。
- ・「射る」は日常で使う機会が少ない
・「得る」は定型表現が多く口に出やすい
・「得る」は“つかむ”の感覚に寄りやすい
・「射る」は比喩の動作を想像する必要がある
混ざるのは、難しいからというより“慣れ”の問題です。
口になじむ方へ寄ることで、誤用が増えていきます。
正誤より先に「通じてしまう」ことが誤用を固定する
誤用が定着する過程で大きいのは、
「意味が通じる場面が多い」
ことです。
会議でも雑談でも、
「その指摘は核心だ」
と言いたいときに、たまたま「的を得る」と言っても、多くの人は会話を止めません。
むしろ話の流れが優先され、「言い方は違うけど、意味は分かる」で通り過ぎます。
ここで誤用は“訂正されないまま”積み上がります。
さらに、文章やニュースの引用で見かけると、
「公的に使われている=正しい」
と感じる人も出ます。
こうして「見たことがある」経験が増えるほど、違和感は薄れます。
結果として、正しい形を知っている人の側も、
「指摘すると細かい人に見えるかも」
と感じて、ますます訂正が起きにくくなります。
誤用が強くなるのは、間違いが広がるというより、
「訂正されない環境」
ができるからです。
- ・会話では意味が通じれば止まりにくい
・訂正が起きないと誤用が積み上がる
・引用や文書で見かけると正しそうに見える
・指摘コストが高いほど定着が進む
誤用は「通じる」ことで静かに強くなります。
だから仕組みを知ると、混同がほどけやすくなります。
❌ 誤用例|比喩の動作を別物に置き換えるケース

自信満々な発言ほど、言葉の正確さが試される。
※ここでの誤用は、「要点に当たる」という意味で使いたいのに、比喩の動作を曖昧にして
「得る」
を選び、結果として違和感や指摘の余地が生まれる使い方を指します。
❌ 日常会話
①その意見、まさに的を得ていて分かりやすいね
②彼の指摘は的を得てるから、話が早く進むよ
③いまの一言は的を得すぎて、ぐうの音も出ない
④あなたの説明は的を得ていて、納得しやすかった
⑤その例えは的を得ていて、状況が想像できるね
⑥結論が的を得てるから、もう迷わず決められる
整理コメント:意味は通じても語の形で揺れが出ます。
❌ ビジネス会話
①部長の指摘は的を得ているので、方針を直します
②その分析は的を得てるから、資料の軸にしましょう
③今回の提案は的を得ているので、採用に近いです
④市場の読みが的を得てるから、優先順位を変えます
⑤課題の捉え方が的を得ていて、議論が締まります
⑥その懸念は的を得てるので、先に潰しておきます
整理コメント:公の場ほど用語の揺れが目立ちます。
❌ ビジネスメール
①ご指摘は的を得ておりますので、修正案を送付します
②ご提案が的を得ており、社内でも共有いたしました
③ご意見は的を得ているため、方針を再検討します
④ご懸念は的を得ておりますので、対応策を追記します
⑤ご指摘が的を得ており、次回資料に反映いたします
⑥ご意見が的を得ているので、議題に追加いたします
整理コメント:丁寧さが増すほど形の違いが残ります。
❌ 会議
①その質問は的を得ているので、先に回答します
②本件の論点は的を得てるから、ここを中心に話そう
③いまの整理は的を得ていて、全員の理解が揃った
④その反論は的を得てるので、前提から見直します
⑤結論が的を得ているため、次の議題に進みます
⑥そのまとめは的を得てるから、議事録に残します
整理コメント:議事録化すると揺れが固定されます。
❌ ニュース・政治
①説明は的を得ているとして、対応の妥当性を示した
②答弁は的を得ているとし、理解を求める姿勢を示した
③指摘は的を得てるとして、改善方針を述べた
④見解は的を得ているとして、追加調査を表明した
⑤批判は的を得てるとして、検討を進めるとした
⑥発言は的を得ているとし、反省を口にした
整理コメント:引用されるほど表現の揺れが広がります。
❌ 文章
①彼の主張は的を得ており、読むほど説得力が増す
②この指摘は的を得ているため、前提が理解しやすい
③例示が的を得ており、結論まで迷わず読める
④論点が的を得ているので、主張がぶれにくい
⑤説明は的を得ており、誤解の余地が少ない
⑥結論が的を得ているから、反論が浮かびにくい
整理コメント:文章は残るので揺れが気になりやすいです。
⭕ 正当例|比喩の動作を「命中」として具体化する使い方

場が上品でも、言葉のズレは静かに伝わってしまう。
ここでは「的を射る」を、比喩としての動作(狙いが当たる)まで含めて使う例を示します。
結論だけでなく「
なぜ当たっているのか」
が見えると、聞き手の納得も安定しやすくなります。
⭕ 日常会話
①その意見、まさに的を射ていて分かりやすいね
②彼の指摘は的を射てるから、話が早く進むよ
③いまの一言は的を射ていて、ぐうの音も出ない
④あなたの説明は的を射ていて、納得しやすかった
⑤その例えは的を射ていて、状況が想像できるね
⑥結論が的を射てるから、もう迷わず決められる
整理コメント:比喩の動作がイメージしやすくなります。
⭕ ビジネス会話
①部長の指摘は的を射ているので、方針を直します
②その分析は的を射てるから、資料の軸にしましょう
③今回の提案は的を射ているので、採用に近いです
④市場の読みが的を射てるから、優先順位を変えます
⑤課題の捉え方が的を射ていて、議論が締まります
⑥その懸念は的を射てるので、先に潰しておきます
整理コメント:説明の筋が通りやすい表現になります。
⭕ ビジネスメール
①ご指摘は的を射ておりますので、修正案を送付します
②ご提案が的を射ており、社内でも共有いたしました
③ご意見は的を射ているため、方針を再検討します
④ご懸念は的を射ておりますので、対応策を追記します
⑤ご指摘が的を射ており、次回資料に反映いたします
⑥ご意見が的を射ているので、議題に追加いたします
整理コメント:定型句としても安定して使えます。
⭕ 会議
①その質問は的を射ているので、先に回答します
②本件の論点は的を射てるから、ここを中心に話そう
③いまの整理は的を射ていて、全員の理解が揃った
④その反論は的を射てるので、前提から見直します
⑤結論が的を射ているため、次の議題に進みます
⑥そのまとめは的を射てるから、議事録に残します
整理コメント:記録に残しても揺れが少ない言い方です。
⭕ ニュース・政治
①説明は的を射ているとして、対応の妥当性を示した
②答弁は的を射ているとし、理解を求める姿勢を示した
③指摘は的を射てるとして、改善方針を述べた
④見解は的を射ているとして、追加調査を表明した
⑤批判は的を射てるとして、検討を進めるとした
⑥発言は的を射ているとし、反省を口にした
整理コメント:引用時も誤解の余地が減ります。
⭕ 文章
①彼の主張は的を射ており、読むほど説得力が増す
②この指摘は的を射ているため、前提が理解しやすい
③例示が的を射ており、結論まで迷わず読める
④論点が的を射ているので、主張がぶれにくい
⑤説明は的を射ており、誤解の余地が少ない
⑥結論が的を射ているから、反論が浮かびにくい
整理コメント:文章では「動作の比喩」が効きます。
ニュース・行政で混同が残りやすい理由を読む
ニュースや行政文脈では、言葉が
・「引用される」
・「見出しになる」
・「短く切り取られる」
ことが多く、表現の揺れがそのまま残りやすい環境があります。
話し言葉の段階で「的を得る」が出ても、意味が通じればそのまま流れ、文字として残ります。
さらに、発言の真意は
「核心を突いた」
という評価にあり、語の正確さは主役になりません。
こうして
「混同」
が“訂正されないまま記録される”ことが積み重なります。
また行政文書では、定型句が多く、書き手が過去の文章を踏襲しがちです。
どこかに紛れた揺れが、そのままコピーされて連鎖することもあります。
評価や批判の話ではなく、文章が増殖する仕組みの問題です。
「混同」
が残るのは、誰かが意図的に間違えるからではなく、正確さが
「優先されにくい」
流れがあるからです。
- ・引用・要約で言葉が固定されやすい
・意味が通じると訂正が起きにくい
・定型句の踏襲で揺れが連鎖しやすい
・正確さより要点が優先されやすい
混同は、拡散よりも「未訂正の蓄積」で強くなります。
仕組みを知ると、違和感の正体が見えやすくなります。
言い換えで意図を具体化して誤解を減らす
「的を射る/得る」で迷うときは、正解を当てるより先に
「何を言いたいのか」
を具体化するとズレが減ります。
たとえば
・「核心を突く」
・「要点を押さえる」
・「論点に合っている」
のように、比喩を使わずに言うと、聞き手の解釈が安定します。
言い換えは態度を柔らかくするためではなく、情報の形を整えるための作業です。
目的別に分けると選びやすくなります。
評価として褒めたいのか、議論を前に進めたいのか、結論をまとめたいのか。目的が決まれば、言葉の型も決まります。
「的」の比喩に頼らない選択肢を持っておくと、
「混同」
による引っかかりを避けられます。
- ・褒める目的:核心を突いている/要点が明確
・議論整理:論点に合っている/筋が通っている
・結論強調:結論がぶれない/焦点が定まっている
・比喩回避:何が当たっているかを一語足す
*参考例文
・その指摘は核心を突いていて、議論の焦点がはっきりしました。
・結論の要点が明確なので、次に何を決めるか迷いにくいです。
迷いが出る場面ほど、比喩より具体語が効きます。
言い換えは、伝わり方のブレを小さくします。
*「的を射ている」の使い方の注意点と類語と言い換え表現
*なぜ「的を得る」は自然に聞こえてしまう?その原因
まとめ|混同は通じることで強くなる
混同は、間違いが悪いから起きるのではありません。
通じてしまう構造が、揺れを残し続けます。
- ・意味が近い錯覚で混同が始まる
・「射る」が遠く「得る」が近い語感がある
・訂正されない環境が誤用を固定する
・言い換えで意図を具体化すると揺れが減る
仕組みを知るだけで、言葉の選び方は安定します。
「的を射る」と「的を得る」の使い分けはどうしていた?

言葉は、使い方ひとつで印象が変わる。
今日もこの猫は、静かに日本語を見つめている。
さて?どうしていたんでしょうね?
「的を射る」
この意味は明快です。
はなしの核心や、問題点の急所を言い当てている際に
「その内容は的を射ていて、完璧な指摘だ」
こんなお話になろうかと。
これは普通に私は使っていました。
勿論、今でも同じ気持ちですし、もし使う場面があったら同じとで使います。
さて・問題は「的を得る」です。
こちらは正直そんなには使った記憶がないんだな~~
しかし、こちらの
「的を得る」
も一般的には同じ比喩表現で使われてるのが、実際の会話の現場。
「的を射る」
の言葉と同じ目的で使っても、実際は
「的を射る」(核心)
という意味で使っても、ほとんどの場合は問題ありません。
が・・これは誤用です。
「的を得る」
は「得る」んです。
つかみ取る。
会相手が核心部分をついた発言をした場合に、使うのはやはり違和感があります。
「得る」
のですから。
文字の通りに解釈するなら
「的を得た」
のは私自身。
相手の発言から、これは核心だと自分が判断した時点でこれは、自分自身が
「的を得た」(確信した)
ということかな??
これはよくありますね。
「語るに落ちる」
ということわざがありますが、その場で指摘しなくとも
「確信を得る」
ことは多数の場面であります。
なんとも、日本語は難しくややこしいですね。
皆さんは如何ですか?
*私の個人的な感想です。
*一番上のヘッダーの写真はわたしが撮影した、八幡平の6月の風景写真です。
とてもいい風景です。
※イメージとして、AIで作成した画像を使用しています。








