なぜ「的を得る」は自然に聞こえてしまうのかを考える

「的を得る」は耳に残りやすく、つい使いたくなります。
- ①「得る」が日常語で出やすい
②意味が通じて止まらない
③褒め言葉の形に見える
④文章でも見かけて慣れる
自然さの正体を知ると、言い換えも選びやすくなります。
Contents
「得る」が自然に聞こえる語感の理由を整理

「得る」の分かりやすさが、誤用でも定着してしまう背景にある。
「的を得る」が自然に聞こえてしまう一番の理由は、
「理解を得る」「同意を得る」「成果を得る」
など、何かを手に入れる・受け取る場面で頻繁に登場します。
すると脳は、
「得る=うまくいった結果」
というイメージを先に取り出します。
そこに「的」という言葉が付くと、
「狙いに合う」「要点に合う」
という意味に自動でつながり、細かい違和感が後回しになりやすいのです。
さらに、「得る」は
「“よい結果を取る”」
方向に寄るため、褒め言葉としても使いやすく見えます。
聞き手も話し手も、会話を止めるより流れを優先するので、
「意味が通じるならOK」
と感じやすい。
ここで「自然さ」が強化されます。
正誤の話に入る前に、まず
「自然に聞こえる仕組み」
がある、と押さえると理解が早くなります。
- ・「得る」は日常で使う機会が多い動詞
・「成果・理解」など“結果”と結びつきやすい
・「的」と合わさると意味が自動補完されやすい
・会話の流れが優先され、違和感が後回しになる
自然に聞こえるのは、知識不足だけが原因ではありません。
耳なじみと自動補完が、違和感を薄くします。
「褒め言葉の形」に見えることで混線が起きやすい
「的を得る」が広まりやすいのは、言い方が
「“褒め言葉の型”」
に見えるからです。
たとえば
「評価を得る」「信用を得る」
のように、「得る」は評価・承認と相性がよい動詞です。
そのため「的を得る」も
「いい感じに当たっている」「上手い指摘だ」
という意味だと感じやすく、使う側も聞く側も安心してしまいます。
また、耳で聞くと
「射る」と「得る」
は一瞬似て聞こえる場面があります。
早口、雑音、オンライン会議の音質など条件が重なると、聞き手は
“意味が通るほう”
に補正します。
すると、発言内容は理解されるのに、表現だけが揺れたまま記憶に残ります。
記憶に残った形が次の発話で再利用され、混線が固定化される流れです。
ここで重要なのは、間違いを責めることではなく、
「褒め言葉の形+音の補正」
が組み合わさると、誤用が増えやすいという構造を理解することです。
- ・「得る」は承認・評価の語と結びつきやすい
・褒め言葉の型に見えて、使う心理的ハードルが低い
・音条件で「射る/得る」が近く聞こえることがある
・“通じた形”が記憶され、次の誤用につながる
誤用は、悪気よりも「使いやすい形」で増えていきます。
自然さの理由を知ると、修正もしやすくなります。
「通じてしまう」ことが違和感を消していく仕組み
「的を得る」が
誰かが
「その意見、的を得てるね」
と言っても、多くの場面では意味が理解され、会話は止まりません。
止まらない体験が積み重なると、聞き手は
「よく聞く=正しいのかも」
と感じ、話し手は「伝わった=問題ない」と感じます。
こうして違和感が薄れます。
さらに文章では、引用やコピペで表現が残りやすく、見かける回数が増えるほど
「“慣れ”」
が強化されます。
ここで「正誤」より「見慣れ」が勝つ瞬間が生まれます。
だからこそ、正しい形を覚えるだけでなく、
「自分は何を伝えたいのか(核心・論点・原因など)」
を具体化して言い換える視点が役に立ちます。
自然に聞こえる理由を言語化できると、相手に説明する時も強い言い方になりにくく、あなたのブログのトーンとも合います。
- ・“通じた経験”が違和感を薄める
・見かける回数が増えるほど、見慣れが正しさに見える
・会話は止めにくく、訂正が起きにくい
・具体化と言い換えで、誤解を減らせる
違和感が消えるのは、間違いが正当化されたからではありません。
通じた回数が、感覚を上書きしていくのです。
❌ 誤用例|「的を得る」を命中表現として使うケース

自信をもって使われるほど、誤用は疑われにくくなる。
※ここでの誤用は、本来「命中」を表す場面で「得る」を使い、
意味は通じるものの表現が混線してしまう使い方を指します。
❌ 日常会話
①その意見は的を得ていると思い、理由を深く考えず同意した。
②彼の説明は的を得ていると感じ、細かな確認を省いてしまった。
③その例えは的を得ている気がして、疑問を口に出せなかった。
④結論が的を得ていると思い、反論する前に話を終えた。
⑤その感想は的を得ているようで、考え直す機会を失った。
⑥指摘が的を得ていると感じ、背景を聞かずに納得した。
整理コメント:意味理解が先行し、表現の揺れが残ります。
❌ ビジネス会話
①その提案は的を得ていると判断し、検証工程を省いて進めた。
②部長の意見が的を得ていると感じ、追加資料を求めなかった。
③的を得ている指摘だと思い、反対意見を控える判断をした。
④分析結果は的を得ているとして、再確認を後回しにした。
⑤結論が的を得ている気がして、議論を早く切り上げた。
⑥その質問は的を得ていると受け止め、前提確認を省いた。
整理コメント:公的な場ほど揺れが目立ちやすくなります。
❌ ビジネスメール
①ご指摘は的を得ているため、詳細確認を省略いたしました。
②ご意見が的を得ていると判断し、根拠説明を省きました。
③的を得ているご提案として、検討過程を記載しませんでした。
④内容は的を得ていると感じ、追加資料を添付しませんでした。
⑤ご指摘が的を得ているため、再検討せず対応しました。
⑥的を得ているご意見として、そのまま共有いたしました。
整理コメント:丁寧でも混線は文章に残ります。
❌ 会議
①そのまとめは的を得ていると感じ、議論を早めに終えた。
②的を得ている意見として、異論を出さずに進行した。
③結論が的を得ていると思い、検証時間を短縮した。
④質問は的を得ていると判断し、優先的に扱った。
⑤その発言は的を得ているとして、議題を次へ移した。
⑥的を得ている指摘だと感じ、記録を簡略化した。
整理コメント:理由共有が不足しやすいです。
❌ ニュース・政治
①説明は的を得ているとして、具体的根拠は示されなかった。
②答弁が的を得ているとされ、検証方法は語られなかった。
③指摘は的を得ているとして、詳細説明が省かれた。
④発言は的を得ていると評価され、数値は示されなかった。
⑤見解が的を得ているとして、反対論点は簡潔に処理された。
⑥説明は的を得ているとされ、責任の所在が曖昧になった。
整理コメント:引用で誤用が固定されやすくなります。
❌ 文章
①彼の主張は的を得ているとして、理由説明を省いて書いた。
②この説明は的を得ているため、補足を入れずに終えた。
③例示が的を得ていると感じ、検証段落を削除した。
④結論は的を得ていると思い、反論想定を書かなかった。
⑤指摘が的を得ているとして、論点整理を省略した。
⑥的を得ている表現だと判断し、修正せず掲載した。
整理コメント:文章では違和感が後から残ります。
⭕ 正当例|「射る」を命中として具体化する使い方

広く使われることで、正誤より「通じるか」が優先されていく。
ここでは正しい形の「的を射る(射ている)」を用い、
どこに当たっているかが分かる形で整えた例を示します。
⭕ 日常会話
①その意見は原因部分に当たり、的を射ていると感じた。
②彼の説明は手順の抜けを示し、的を射ている内容だった。
③その例えは状況のズレに向き、的を射ていると分かった。
④今の指摘は前提条件を突き、的を射ていると納得した。
⑤感想は狙いに合っており、的を射ていると思えた。
⑥その質問は論点を押さえ、的を射ていると受け止めた。
整理コメント:当たり先が見えると理解が揃います。
⭕ ビジネス会話
①その提案は納期遅延の原因に当たり、的を射ている。
②部長の意見は前提数字を突き、的を射ていると判断した。
③指摘は人員配置の問題に向き、的を射ている内容だ。
④分析はコスト増の要点を押さえ、的を射ている。
⑤質問はリスクの根に当たり、的を射ていると感じた。
⑥結論は課題の焦点を示し、的を射ていると評価した。
整理コメント:評価語としても安定します。
⭕ ビジネスメール
①ご指摘は遅延原因に当たり、的を射ていると受け止めました。
②ご意見は仕様の曖昧さを指し、的を射ていると判断します。
③ご提案は見積前提に触れ、的を射ている内容です。
④ご懸念は運用負荷に向き、的を射ているため追記します。
⑤ご指摘は責任範囲に当たり、的を射ていると整理しました。
⑥内容は手順の抜けを示し、的を射ていると考えます。
整理コメント:文章でも意味の芯が残ります。
⭕ 会議
①その質問は前提条件のズレに当たり、的を射ている。
②指摘は工数見積の根拠を突き、的を射ていると判断した。
③まとめは論点を価格に絞り、的を射ている内容だ。
④反論は検証不足を示し、的を射ていると評価された。
⑤一言は目的定義に向き、的を射ているため戻した。
⑥質問は論点の核心に当たり、的を射ていると受け止めた。
整理コメント:共有が進みやすくなります。
⭕ ニュース・政治
①説明は手続き遅れの原因に絞り、的を射ていると述べた。
②答弁は費用根拠を示し、的を射ている指摘と認めた。
③指摘は制度の穴に向き、的を射ているとして点検した。
④発言は数字前提に当たり、的を射ていると評価された。
⑤見解は責任分界を示し、的を射ているとして説明した。
⑥説明は運用の弱点に向き、的を射ていると受け止めた。
整理コメント:要約されても意味が残ります。
⭕ 文章
①この一文は原因を手順に絞り、的を射ていると分かる。
②比喩は結論の弱点に当たり、的を射ている理由も示した。
③指摘は前提数字に向き、的を射ている説明を添えた。
④結論は論点を一つに絞り、的を射ていると理解できる。
⑤当たり先を明示し、的を射ている表現に整えた。
⑥狙いのズレを示し、的を射ていると納得できる形にした。
整理コメント:文章では具体化が効きます。
ニュース・政治・行政で「得る」が残りやすい理由
ニュースや行政の文脈では、
そのとき「的を得る」のような
「“分かりやすく見える形”」
が残りやすい傾向があります。
理由の一つは、「得る」が日常語で、読者にも即座に意味が届きやすいからです。
書き手も読み手も、細かな比喩の動作より
「要点に合う」
という結果のほうを優先しやすい。
また、行政文書や会見原稿は、過去の言い回しを踏襲することが多く、表現が一度紛れるとそのまま連鎖しがちです。
ここで大切なのは、誰かを責めることではなく、文章が流通する仕組みが
「“見慣れた形”」
を強くする、という点です。
見慣れが増えるほど「自然に見える」ため、誤用が見えにくくなります。
- ・要約で「結果が伝わる形」が残りやすい
・「得る」は読者に届きやすい日常語
・踏襲・引用で表現が連鎖しやすい
・見慣れが増えるほど違和感が薄れる
残りやすさは、正しさより「流通の都合」で起きます。
仕組みを知ると、見慣れに引っ張られにくくなります。
言い換え・類語整理|目的別に具体語へ置き換える
迷ったときは、「的」を使うかどうかより、
褒めたいのか、論点を整理したいのか、原因を示したいのか。
目的が決まると、比喩より具体語のほうが誤解が減ります。
言い換えは態度を飾るためではなく、
「情報の形を整える」
作業です。
たとえば「的を得る」を使いたくなったときは、
「核心」「論点」「要点」「原因」
などの語に置き換えると、聞き手の迷いが減ります。
文章でも会話でも、当たり先が見えると納得が安定します。
- ・褒める:核心を突いている/要点が明確だ
・整理する:論点に合っている/焦点が定まっている
・分析する:原因を押さえている/前提が整理されている
・確認する:筋が通っている/根拠が見える
*参考例文
①その指摘は核心を突いていて、議論の焦点がはっきりしました。
②要点が明確なので、次に確認すべき前提が自然に見えてきます。
言い換えは、正誤の話を柔らかくする道具にもなります。
具体語に寄せるほど、伝わり方のブレが小さくなります。
まとめ|自然さの正体を知って整える
「的を得る」は耳なじみで自然に感じやすい表現です。
だからこそ、仕組みを知って選び直せます。
・「得る」は日常語で褒め言葉に見えやすい
・通じる経験が違和感を消しやすい
・迷う時は具体語へ言い換える
見慣れに流されず、意図が伝わる形に整えましょう。
「的を得る」は誤用でも意味が通じるから厄介

言葉は、使い方ひとつで印象が変わる。
今日もこの猫は、静かに日本語を見つめている。
「的を得る」
は「的を射る」の言葉の誤用になります。
ではこの言葉の使い方での正解はあるのか?
少し調べてみたのですが、どうやら無いようですね。
(あるのかもしれませんが私の見解ではそのようです)
「的を得る」
は言いやすいですもんね。
ほんとは「的を射る」なのですが。
私はこの差はある時期、と言っても相当に早い時期方知ってました。
なので、誤用は無いと思うのですが、たまに入ったかもしれません…しかしそれは意図的にかもしれませんね。
どういう場面で?
相手が「的を得る」という言葉を発した時。
なかなか、それは誤用だとは言えませんからね~~
相手に合わせるしかありません。
気づかせるために、あえて使ったような気もします。
指摘ってなかなかできませんよね。
でも、結構この間違いには、出会ってます。
皆さんは如何ですか?
*私の個人的な感想です。
*一番上のヘッダーの写真はわたしが撮影した、八幡平の6月の風景写真です。
とてもいい風景です。
※イメージとして、AIで作成した画像を使用しています。








